親が認知症になったら実家は売れる?成年後見と売却前の確認ポイント

実家の玄関で母親の希望を聞く娘。「親が認知症に」「実家は売れる?」「本人の意思・権限・許可を確認」の文字を大きく配したイメージ画像 実家の売却

親の物忘れが増え、実家をどうするか家族で話し始める方は少なくありません。ただ、親が認知症等により判断能力が十分でない場合、実家の売却には本人の意思確認や法的な権限の有無が関わってきます。

なお、成年後見制度を見直す改正法は2026年6月に公布されています。本記事は2026年10月16日時点で確認できた裁判所の手続案内等をもとに、現行制度の考え方を整理したものです。実際に手続きを進める際は、法務省の改正法・施行に関する案内や家庭裁判所の案内を必ず確認してください。

親の希望と名義、そして契約の権限を確認する

実家を売却できるかどうかを考える前に、まず確認すべきことがあります。登記事項証明書などで名義と権利関係を確認し、実家が誰の所有になっているかを把握することです。

親が所有者である場合、子であることや、子供たち全員が売却に賛成していることだけでは、親に代わって契約を結ぶ権限は生まれません。契約を結べるのは、本人自身か、法的に代理権を持つ人に限られます。判断能力が不十分な方を支援するための制度の考え方は、法務省の法定後見Q&Aでも説明されています。

一方で、認知症という診断名だけで「もう売却はできない」と決めつけることもできません。判断能力の程度は人によって異なり、本人の意思や生活状況を個別に確認したうえで、どのような手続きが必要かを見極める必要があります。

成年後見制度は、本人の暮らしを支えるための制度

判断能力が十分でない方の生活や財産を支える仕組みが、成年後見制度です。法定後見には本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、後見人等に与えられる代理権や同意権の範囲はそれぞれ異なります。制度の概要や申立て時の留意点は、裁判所の制度概要にまとまっています。

申立てをしても、家族が候補者として希望を出したからといって、必ずその人が選ばれるわけではありません。家庭裁判所が本人の状況に応じて選任を判断し、その結果に対して不服を申し立てることもできません。申立てに必要な費用や、後見人等への報酬が生じる場合についても、制度を利用する前に家庭裁判所や専門家へ確認しておきましょう。

また、実家の売却という目的が済んだからといって、家族の判断で後見制度の利用を終了させることはできません。本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで、手続きは続きます。

実家の売却を考える際には、まず「今、親にどの類型が当てはまるのか」「誰にどの権限があるのか」を確認することが出発点になります。

居住用不動産の処分には、家庭裁判所の許可を確認する

成年後見人や、その処分について代理権を付与された保佐人・補助人が、本人に代わって本人の居住用不動産を売却・賃貸・取り壊しなどで処分する場合には、家庭裁判所の許可を得る必要があります。許可の対象や申立人の範囲は、居住用不動産の処分についての許可の案内で確認できます。許可のない処分は無効となるため、この点は売却を進める前に必ず確認すべき手続きです。

ここでいう「居住用不動産」には、現在親が暮らしている家だけでなく、施設に入所する前に住んでいた家や、将来住む可能性がある家も含まれます。施設入所後に空き家になった実家であっても、対象から外れるわけではありません。

保佐人や補助人の場合は、すべての方が売却を代理できるわけではなく、家庭裁判所の審判によって不動産処分の代理権が個別に付与されている場合に限られます。権限の範囲は、審判書などで確認することになります。

なお、これはあくまで後見人等が本人に代わって処分する場面の手続きです。本人が自ら契約する場合の意思能力や、利用している制度・代理権の範囲は個別の確認が必要です。親の不動産売却すべてに、同じ許可手続きが必要だと一般化しないようにしましょう。

売却の必要性と、本人の生活を整理する

後見人等が選任されているかどうかにかかわらず、実家を売るかどうかを考える際には、本人の生活と意向を中心に状況を整理しておくと、専門家への相談や裁判所の手続きがスムーズになります。施設入所後の実家の管理や空き家対策について整理した内容は、親の施設入所後の実家管理の記事でも紹介しています。

以下は、相談前に家族内で整理しておくと役立つメモの例です。これは当サイトが相談の準備用に用意した整理表であり、裁判所への提出が必須とされている書類一覧ではありません。

確認項目 書き出しておくこと
本人の状況 現在の住まい、本人の意向、判断能力に関する医師等の見解
名義・権限 登記上の所有者、成年後見等の利用状況、代理権の範囲
生活・費用面 施設費や生活費の見通し、売却を考えている理由
不動産の状況 建物の状態、空き家期間、おおまかな資産状況

売却が実現した場合、その代金は本人の財産です。本人の意向と利益、今後の生活や医療・介護の見通しを踏まえ、管理方法や使い道を後見人等や専門家と確認しましょう。

相談から売却準備までの確認順

実家の売却に向けて動き出す際は、次のような順番で確認していくと整理しやすくなります。

まず、弁護士や司法書士などの専門家に、現在の権限状況(誰が代理権を持つのか、家庭裁判所の処分許可が必要かどうか)を確認します。次に、許可が必要な場合は家庭裁判所の案内に沿って必要な書類や手続きを確認します。そのうえで、免許を持つ宅地建物取引業者に査定を依頼し、実際の売却条件を検討していきます。不動産会社の選び方について整理した内容は、不動産会社の選び方の記事でも紹介しています。

許可や代理権の確認が済んでいない段階で、契約条件や締結の時期、手付金の扱い、引渡し日程などを自己判断で確約することは避けてください。必要な手続きは案件ごとに異なるため、誰にでも当てはまる一律の順序として受け取らず、個別の状況に応じて専門家や家庭裁判所に確認することが大切です。

よくある質問

Q. 子供全員が賛成していれば、実家を売却できますか?

A. 子供全員の賛成だけでは、親が所有する実家を売却する権限は得られません。契約を結べるのは本人自身か、法的に代理権を持つ人に限られます。本人の意思・判断能力と、誰がどの権限で契約するのかを個別に確認することが必要です。

Q. 親が施設に入所して空き家になった実家は、許可なく売却できますか?

A. 空き家になったからといって許可が不要になるわけではありません。入所前に住んでいた家や将来住む可能性がある家も「居住用不動産」に含まれ、後見人等が処分する場合は家庭裁判所の許可を確認する必要があります。

Q. 保佐人や補助人であれば、誰でも実家の売却を代理できますか?

A. 誰でも代理できるわけではありません。家庭裁判所の審判により、不動産の処分についての代理権が個別に付与されている場合に限られます。権限の有無と範囲は、審判書などで確認してください。

Q. 実家を売却すれば、成年後見制度の利用をやめられますか?

A. 売却という目的が済んでも、家族の判断で利用を終了させることはできません。本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで手続きは続くため、売却後の対応についても事前に確認しておく必要があります。

相談前に状況を整理する

実家の売却に関わる相談先は、役割によって異なります。弁護士や司法書士はそれぞれの権限の範囲で法律手続きに関わり、家庭裁判所は制度や許可に関する手続き案内を行い、実際の売却の媒介は免許を持つ宅地建物取引業者が担います。

当サイトは、宅地建物取引士と相続診断士の資格を持つ立場から、愛知県内と近郊の方を対象に、初回無料で資料や希望の整理、一般的な情報提供、専門窓口の案内を行っています。売買の仲介や買主探し、代理交渉、個別の法律・税務・登記の判断はお受けしていませんが、何から確認すればよいか分からない場合の整理役として活用いただけます。詳しくは無料相談のご案内をご覧ください。

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