相続した実家を売却するとき、「仲介手数料は経費になるの?」「解体費や測量費も譲渡費用になるの?」といった疑問を持つ方は多いと思います。
不動産を売却したときの譲渡所得は、一般的に売却金額から「取得費」と「譲渡費用」などを差し引いて計算します。この「譲渡費用」に何が含まれるのかは、費用の種類や状況によって取扱いが異なります。
この記事では、国税庁の公表資料をもとに、譲渡費用になるとはっきり説明できるもの、状況によって取扱いが異なるもの、取得費と混同しやすいもの、そして今回確認した資料だけでは判断できないものを整理します。個別の税額計算は行いません。
譲渡費用とは何か
土地や建物を売却したときの譲渡所得は、一般的に次のような考え方で計算します。
譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額
このうち譲渡費用は、土地や建物を売るために直接かかった費用を指します。一方、取得費は、その土地や建物を取得したときにかかった費用です。同じ「費用」であっても、取得のためにかかったのか、売却のために直接かかったのかによって扱いが分かれます。
譲渡所得や取得費の基本については、記事004「相続した実家を売却すると税金はどうなる?」でも整理しています。
売却のための仲介手数料は譲渡費用になる
不動産会社に売却を依頼して支払う仲介手数料は、譲渡費用の代表的な例として国税庁の資料に示されています。
売却するために不動産会社へ支払った仲介手数料であれば、譲渡費用として扱われるものと整理できます。
売主が負担した売買契約書の印紙税
不動産の売買契約書に貼付する印紙税のうち、売主が負担した分は、譲渡費用の代表的な例として示されています。
買主と売主のどちらが印紙税を負担したかによって、売主の譲渡費用になるかどうかが変わる点には注意が必要です。
修繕費や固定資産税などの維持管理費は譲渡費用にならない
固定資産税や、所有している間に行った通常の修繕費など、不動産を維持管理するためにかかった費用は、譲渡費用には含まれません。
「不動産に関する支出だから譲渡費用になる」わけではなく、「売却のために直接かかった費用かどうか」で判断される点を押さえておく必要があります。
測量費は状況によって取扱いが異なる
測量費は、支出した目的や時期によって、譲渡費用になる場合と取得費になる場合があります。
売却するにあたり、売却条件を確定させるために行った測量の費用は、譲渡費用として扱われる場合があります。一方で、土地を取得した際に境界を確認するために支払った測量費は、取得費に含まれる場合があります。
同じ「測量費」という名目でも、いつ・何のために支出したものかによって取扱いが異なるため、一律に「測量費は譲渡費用になる」とは言えません。個別の状況については税務署または税理士へ確認してください。
建物の解体費用も条件によって譲渡費用になる場合がある
相続した実家の建物を取り壊してから土地を売却するケースでは、解体費用(取壊し費用)の取扱いが問題になることがあります。
国税庁の資料では、一定の場合に、土地を譲渡する目的で行った建物の取壊し費用と、その建物の取壊し時における損失額(建物の未償却残高相当額等)が譲渡費用になるとされています。ただし、これは「建物を解体すれば必ず譲渡費用になる」という意味ではなく、譲渡のために行ったと言えるかどうかなど、状況によって判断が分かれるものです。単に老朽化した建物を維持管理上の理由で取り壊す場合とは、目的が異なる点にも注意が必要です。
解体を検討する場合は、売却計画とどのような関係にあるかを整理したうえで、譲渡費用として扱えるかどうかを税務署または税理士へ確認することが安全です。
立退料・違約金・名義書換料も一定の場合に譲渡費用となることがある
賃借人がいる不動産を売却するために支払った立退料や、売却を有利に進めるためにほかの契約を解除した際の違約金などについても、一定の場合に譲渡費用となるとされています。また、借地権など借りている土地の上の建物を売却する際に地主へ支払う名義書換料についても、一定の場合に譲渡費用となる例として示されています。
こうした費用は、支払った目的が「その不動産を売却するため」と言えるかどうかによって取扱いが分かれます。名目だけで判断できるものではないため、該当しそうな費用がある場合は、事情を整理したうえで個別に確認する必要があります。
取得費と混同しやすい費用(相続登記費用・取得時の測量費など)
相続に伴って発生する費用の中には、譲渡費用ではなく取得費に関係するものがあります。
たとえば、相続登記の際にかかった登録免許税などの登記費用は、一般的に取得費に関係する費用として整理され、売却のために直接かかった譲渡費用とは区別されます。また、前述のとおり、土地を取得した時点で支払った測量費も、取得費に含まれる場合があります。
なお、取得費が分からない場合に用いる概算取得費(売却金額の5%相当額)を使うときは、相続登記費用などを別途取得費に上乗せできない取扱いがあります。取得費がわからない場合の考え方については、記事005「相続した実家の取得費がわからないときは?」で詳しく整理しています。
「相続に関連する費用だから譲渡費用になる」と考えるのではなく、その費用が取得に関するものか、売却に直接関するものかを分けて整理することが大切です。
今回確認した国税庁の一次資料だけでは判断できない費用
相続した実家の売却では、このほかにもさまざまな費用が発生します。たとえば、相続登記手続きを依頼した際の司法書士報酬、家財などの残置物撤去費用、ハウスクリーニング費用、遺品整理費用、隣地との境界確定にかかった費用などです。
これらの費用について、今回確認した国税庁の一次資料だけでは、譲渡費用として扱われるかどうかの明確な判断基準までは確認できませんでした。そのため、この記事では「これらの費用は必ず譲渡費用になる」とも「ならない」とも断定しません。
該当する費用が発生する場合は、支出の目的や売却との関係を整理した資料(見積書・請求書・契約書など)を保管したうえで、税務署または税理士へ個別に確認することをおすすめします。
譲渡費用に該当するかどうかは資料を残して個別に確認する
ここまで見てきたように、譲渡費用になるかどうかは、費用の種類だけでなく、支出した目的や時期、売却との関係によって判断が分かれます。
売却を進める際は、仲介手数料や印紙税の負担、測量・解体・立退きなどが発生した場合はその経緯、相続登記など取得に関する費用との違いを意識しながら、領収書や契約書、見積書などの資料を保管しておくことが重要です。
最終的にどの費用が譲渡費用として認められるか、実際の税額計算をどう行うかについては、この記事だけで判断せず、税務署または税理士へ確認してください。
相続した実家を売却する際の手続きや流れ全体については、記事002「相続した実家を売却するには?」も参考にしてください。
相続した実家をどうするか迷っている方へ
「売却した方がいいのか」「このまま残した方がいいのか」など、実家の不動産としての整理や売却についてご相談いただけます。税務上の個別判断については、税務署または税理士へご確認ください。
本記事は、国税庁等が公表している情報をもとに、不動産売却に関する税制度を一般的に解説したものです。個別の税務判断や税額計算については、税務署または税理士へご確認ください。


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