相続した実家はどうする?売る・貸す・住む・残す前に確認したい7つのこと

相続した実家を売る・貸す・住む・残す選択肢を解説するイメージ 実家の相続

実家を相続すると、「売った方がいいのだろうか」「貸すことはできないか」「自分たちで住むべきか」「思い出があるから残したい」など、いくつもの選択肢が出てきます。

しかし、相続した直後から「売る・貸す」を決める必要はありません。

不動産の相談を受けていると、実家について相談に来られた時点では、ご本人もご家族も考えがまとまっていないことは珍しくありません。

大切なのは、「どうするか」を決める前に、「今どうなっているのか」を整理することです。

この記事では、相続した実家について考えるとき、最初に確認しておきたい7つのポイントを不動産実務の視点から整理します。

土地と建物の「名義」を確認する

最初に確認したいのが、不動産の名義です。

実家というと一つの不動産のように感じますが、実際には「土地」と「建物」がそれぞれ登記されています。

そのため、土地は誰の名義なのか、建物は誰の名義なのかを分けて確認します。

亡くなった親だけでなく、祖父母など以前の所有者の名義が残っていることもあります。

固定資産税の納税通知書だけで判断せず、登記事項証明書などで登記上の所有者を確認しておくとよいでしょう。

相続登記は2024年4月から義務化されています

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。

原則として、相続などによって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

遺産分割が成立した場合にも、その成立日から3年以内に、それによって取得した内容を踏まえた登記申請が必要になります。

また、2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象です。経過措置の対象となる場合、2027年3月31日が一つの重要な期限となります。

正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

名義が亡くなった方のままなら、「そのうち手続きしよう」と放置せず、法務局や司法書士などへ確認しておきましょう。

相続人・共有者を整理する

次に確認したいのが、「この実家について誰と話し合う必要があるのか」です。

例えば兄弟姉妹で相続して共有している場合、自分一人だけの判断では進められないことがあります。

確認したいのは、相続人は誰なのか、遺産分割協議は済んでいるのか、現在誰の名義になっているのか、共有の場合それぞれの持分はどうなっているのか、家族それぞれが実家をどうしたいのか、といった点です。

不動産そのものよりも、家族間で考えが整理されていないことが判断を難しくしている場合もあります。

特に売却を検討する場合には、査定価格だけを調べるのではなく、まず誰が権利を持っているのかを把握することが重要です。

なお、相続した空き家の譲渡所得の特別控除など、相続人の人数や他の相続人による売却が適用判定に関係する制度もあります。

税制については共有者それぞれで自己判断せず、売却前に税務署や税理士などへ確認してください。

土地と建物の状態を確認する

次は実家そのものを確認します。

建物なら、雨漏り、傾き、シロアリ、設備の故障、残置物、増改築の有無など。土地なら、境界、接道、越境、擁壁など。

こうした状態によって、利用方法や売却方法が変わることがあります。

そして、ここで特に注意したいのが、「古い家だから先に解体してしまおう」と決めないことです。

古家付きのまま売却する方法もあります。

また、後述する相続した空き家の税制では、家屋を残して売却する場合と、取り壊して土地を売却する場合などについて、それぞれ要件があります。

2024年以降の譲渡では、一定の要件を満たせば、売却後に買主側が期限までに耐震工事や取り壊しを行うケースも特例の対象となり得ます。

そのため、解体 → 査定ではなく、現状確認 → 査定・制度確認 → 売却方法を比較 → 必要なら解体、という順番で考える方がよいでしょう。

実家を残した場合の年間コストを計算する

実家は誰も住んでいなくても、所有しているだけで費用がかかります。

例えば、固定資産税・都市計画税、火災保険、庭木の手入れ、草刈り、修繕費などです。マンションなら管理費や修繕積立金などもあります。

遠方にある実家なら、管理のために現地へ行く交通費や時間も必要になります。

そこで一度、「この実家をあと1年間所有したら、いくら必要なのか」を計算してみましょう。

例えば年間30万円の維持費がかかると分かれば、「すぐ売却した方がいい」ではなく、「30万円を負担してでも1年間家族で考える時間を取るか」という判断ができます。

売却価格だけでなく、持ち続ける場合の数字も見えるようにすることが大切です。

「売れる価格」と「貸せる家賃」を調べる

まだ売却すると決めていなくても、不動産の市場価値を確認しておくことには意味があります。

売却査定だけでなく、賃貸として利用できそうな実家なら、賃料査定も確認します。

例えば、「2,000万円前後で売却できそう」という情報に加えて、「修繕すれば月10万円程度で貸せる可能性がある」と分かれば、家族で比較できるようになります。

ただし、賃貸には修繕費、管理、空室などのリスクもあります。逆に売却すれば、その後に同じ家へ戻ることは基本的にはできません。

だからこそ、査定=売却の決断ではありません。

査定は、「家族が判断するための材料を集めること」と考えてください。

売却する前に税金・特例を確認する

相続した実家を売却する場合、条件によって税金の特例を利用できることがあります。

代表的なものが、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。

いわゆる「相続空き家の3,000万円特別控除」と呼ばれる制度です。

ただし、相続した実家なら誰でも3,000万円控除できる制度ではありません。

例えば、被相続人が住んでいた家であること、原則として1981年5月31日以前に建築された家屋であること、一定の期限までに売却すること、譲渡価額について一定の要件を満たすことなど、複数の条件があります。

2024年1月1日以降の譲渡では、対象となる相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除限度額が最大2,000万円となります。

また、この特例の対象となる譲渡は、現行制度では2027年12月31日までとされています。相続開始からの売却期限についても条件があります。

さらに、市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」が交付されたとしても、それだけで特例の適用が確定するわけではありません。

最終的な税務上の適用については確定申告を含めた確認が必要です。

そのため、売却契約や解体をしてから税金を確認するのではなく、売却方法を決める前に確認することが重要です。

個別の適用可否については、税務署や税理士などへ相談してください。

最後に「家族としてどうしたいか」を話し合う

名義、共有者、不動産の状態、維持費、市場価値、税金。ここまで確認したら、最後に家族の希望を整理します。

実家には経済的な価値だけでなく、思い出があります。

数字だけなら売却が合理的でも、家族の誰かがまだ気持ちの整理をできていないこともあります。

反対に、「思い出があるから残したい」と思っていても、年間の維持費や管理負担を数字にすると考え方が変わることもあります。

そこで、「気持ち」と「現実的な条件」をいったん分けて整理することをおすすめします。

「残したいか」と「維持できるか」は別の問題です。両方を確認してから家族で結論を出しても遅くありません。

7つ確認してから「売る・貸す・住む・残す」を比較する

ここまで整理すると、実家について大きく4つの選択肢を比較できるようになります。

売る

現金化でき、今後の管理負担を減らせます。一方で、売却時期、税金、建物を残すか解体するかなどの検討が必要です。

貸す

実家を所有しながら家賃収入を得られる可能性があります。ただし、修繕、管理、空室、将来の売却なども考える必要があります。

住む

自分や家族が住むことで実家を活用できます。リフォーム費用や生活環境なども確認します。

残す

すぐに結論を出さず、そのまま所有することも選択肢です。ただし、維持費と管理方法は決めておきます。

どれが正解というわけではありません。

不動産の状態、家族構成、資金、税金、そして家族の気持ちによって答えは変わります。

まとめ|売るかどうかを決める前に「実家を整理する」

相続した実家について考えるとき、最初から「売る・残す」の二択にする必要はありません。

まず、名義 → 相続人・共有者 → 土地・建物の状態 → 年間維持費 → 売却価格・賃料 → 税金・制度 → 家族の意向、の7つを整理してみてください。

そのうえで、売る・貸す・住む・残す、を比較します。

何から調べたらいいか分からない段階でも構いません。

実家の不動産整理室では、売却を前提とするのではなく、「まだ売るか決めていない」という段階から、実家の状況を一緒に整理することを大切にします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました